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自己破産Q&A第4回
みなさん こんにちは

今回は先回のテーマ「自己破産手続と自由財産」の続編です。
先回は「自由財産」とは何か?についてまた自由財産のうち「現金」についてお話しました。

今回は現金以外の自由財産及び破産手続後の財産管理についてお話します。

2 差押え禁止財産

(1) 民事執行法131条で差押が禁止されている動産
(破産法34条3項2号)
民事執行法131条1項 

債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具

ただし民事執行法132条1項により裁判所が差押を許可したり、破産手続き開始後に差押ができるようになったものを除く(破産法34条3項2号但し書き)


(2) 給料、賃金、俸給、退職年金及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に準じるものの4分の3に相当する部分
  
(民事執行法152条1項2号)

(3)債務者が国及び地方公共団体以外の者から生計を維持するために支給を受ける継続的給付に係る債権(年金・生活保護受給金等)の4分の3に相当する部分

(民事執行法152条1項1号)

3 その他の自由財産

(1) 自由財産の拡張が認められた財産

「自由財産の拡張」とは、文字通り自由財産の範囲を広げることです。
裁判所が破産者の生活の状況、破産手続開始の時において破産者が有していた差押え禁止財産の種類及び額、破産者が収入を得る見込みその他の事情を考慮して、自由財産の範囲を広げることができます。
(破産法34条4項)
拡張された自由財産も勿論、破産者の自由財産となります。

(2) 破産財団からの放棄財産

破産者の財産は、原則、換価して債権者に弁済・配当されますが、財産によっては換価できないもの、また換価できても換価するのに費用がかさみ、財産自体の価値を超える等、換価できない財産があります。その場合、破産管財人(破産財団の財産を管理処分する人)の判断により破産者に該当財産を戻す場合もあります。(破産財団からの放棄といいます)
(破産法78条2項)
その放棄された財産も自由財産となります。


上記の自由財産については破産者に管理処分が許されるので、最低限度の生活はできるような配慮がされています。




破産手続き終了後の破産者の財産


破産手続終了後については破産者の財産に対して制約は課せられないので、自己の財産は自由に管理処分できるようになります。

破産者に一定以上の財産がない場合

上記で説明した「破産者の財産」について裁判所が管理処分する場合の破産事件を「管財事件」といいます。
しかし、一定水準以上の財産を破産者が保有していない場合は、破産手続が廃止となり終了します。

破産手続は、上記でも説明したように、破産者の財産を換価して債権者に弁済配当することが原則となりますが、破産者に債権者に配当すべき財産がない場合
(破産手続費用を支払う費用がない場合)は、廃止となります。

破産者の財産を調査して財産が無かった場合に廃止されるのが「異時廃止」事件
といいます。
また破産手続開始の時点で調査をする以前に破産者に財産がないことが明らかである場合は破産手続開始と同時に廃止となり、「同時廃止」事件といいます。

(破産法216条1項)
裁判所は、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときは、破産手続開始の決定と同時に、破産手続廃止の決定をしなければならない。


廃止事件の場合でも破産者の有する財産に制約は課せられないので、上記で説明した「自由財産」制度の趣旨と同様に最低限度の生活をできるようになります。


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[2016/08/30 15:00 ] | 債務整理 | コメント(0) | トラックバック(0)
自己破産Q&A 第3回
みなさん こんにちは(こんばんは)
今回も、うちの事務所で自己破産の相談でよくある質問をとりあげます。

「自己破産すると自分のお金を自由に使えなくなるんですか?」
「給料はどうなるのですか?」
といった質問はよくあります。

自己破産を申立て希望の人で、ある程度の財産を保有している人は、
自己の財産を債権者に弁済した後に、それでも借金が全額弁済されない場合で、かつ支払いができない状態で免責が認められる手続きの流れとなります。
その場合、自己の財産は裁判所(が選任した破産管財人)が調査して、財産を債権者に公平に弁済配当する手続きとなります。

しかし、一定以上の財産を保有していない場合は、財産を管理されることはありません。その場合は事実上自己の財産に制約を課せられません。
私の事務所でも自己破産の事件はほとんどが後者のパターンです。
財産を管理される場合でも、全ての財産を取り上げられると生活ができなくなってしまいます。
よって破産者が生活ができるように法律で一定の財産は自分で利用処分ができます。その自分が利用処分できる財産のことを「自由財産」といいます。
今回は「自由財産」についてお話します。
詳しくは、以下でご説明します。
Q 破産してしまうと、自分の財産は債権者に弁済されるために取り上げられると聞きましたが、破産すると生活できなくなるのでは?と心配です。
また、破産手続が終了しても給料等今後取得予定の財産について何か制約はあるのでしょうか?

A
破産手続開始後の破産者の財産管理
破産手続は、破産申立人の財産を換価(財産物を金銭に換える)して債権者に弁済するという手続きですので、破産申立人の主要な財産は原則、裁判所から管理されることになります(具体的に裁判所が選任した破産管財人が事実上管理・処分することになります)

その(破産者の有する)財産の集合体を「破産財団」と言います。
換価されて債権者に弁済・配当されたり、換価処分できない財産は破産者に戻されることがあります。

以上のように破産した人は、原則保有する財産を自分で管理・処分することができなくなります。

しかし破産者の保有する全ての財産をとりあげてしまうと破産者は生活ができなくなります。

よって、個人が破産する場合は、生活のために必要な財産については、上記の制度の例外として破産者が管理処分することができます。

この破産者が保有を許された財産のことを「自由財産」といいます。

自由財産となる財産

1、99万円以下の現金
  民事執行法131条3号で定められている規定の金額に2分の3を乗じた額の現金は自由財産とされています。(破産法34条3項1号)

民事執行法131条3号 
標準的な世帯の二月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭

政令というのは「民事執行法施行令」のことで、「政令で定める金額」とは同令第1条で
「66万円」と定められています。

66万円に3/2を乗じると99万円となります。

よって99万円までの現金は自由財産として破産者が管理処分できます。
現金以外の預貯金は自由財産には含まれません。

例:破産者が以下の財産を保有した場合
現金32万円、預貯金(銀行口座に保有する残高)30万円、有価証券30万円相当
現金の32万円しか自由財産とならない

破産法34条3項1号
民事執行法第百三十一条第三号に規定する額に二分の三を乗じた額の金銭


次回は「現金」以外の自由財産についてお話します。
[2016/08/21 22:14 ] | その他 | コメント(0) | トラックバック(0)
消滅時効Q&A第3回補足
みなさん こんにちは

消滅時効Q&A第3回について、「10年間は時効が完成しないのはわかったけど、何故、そうなるんだ?
改めて時効を主張すれば、その時点で借金は消えないのか?」
「和解したって、時効が完成してるんだから、中断にはならないのじゃないの?」と質問が寄せられました。
前回、いささか説明不足があり、わかりづらくてすいません。

前回の補足として、もっとわかりやすく、補足文章を付け加えました。
重複する部分はすいません





消滅時効が完成していることを知らないで、消滅時効の効力を妨げる行為をやってしまった場合、消滅時効の制度も知らない、ましてや消滅時効が完成していることも知らない、そして自分の行為が消滅時効の完成している効力を否定することも知らず、その行為をやってしまう。
そのような場合救済措置はないのでしょうか?
結論から言うとなかなか厳しいといわざるをえません。

消滅時効の基本的な知識を説明した上で、詳しくお話します。
消滅時効とは一定期間、権利が行使されないと権利が消滅する民法で定められている制度です


   貸金業者から借入をし、最後に返済したとき又は最後に借入をしたとき
   (どちらか遅いときから)5年以上経過 した場合は消滅時効が完成してい
   る可能性があります。
 
    最後の返済又は最後の借入から5年以上経過していて、その間に
   「時効の中断」となるような事実がない限り、 消滅時効が完成するこ
    とになります。
    「時効の中断」とは訴訟を提起されたり、自分が債務を承認(借入のある
    ことを認めること)したり、(残額の一部を弁済したりすることも承認となり
    ます)強 制執行(差押) されたりすることになります。
   もし、5年以上借入も返済もしていない場合で、貸金業者から、請求され
   たり、 訴訟を提起されたりした場合は、お気軽に当事務所にご相談くだ
   さい。

Q
 私は、借り入れ又は返済の遅い時期から5年以上経過した後に裁判を起こされました。

 そのときは、消滅時効のことを知らなかったので、相手側の請求を認めて分割で支払う旨の裁判上の和解を締結しました。

 今から消滅時効の完成を主張することはできませんか?
    


私に過去依頼をされた方で、質問のような事例は多くありました。

裁判を起こされた時点で、すぐ依頼をされた方は良かったのですが、
裁判の手続きのなかで債務を承認した後に、「裁判の途中だが、なんとかしてくれ」と頼まれてきた方もいました。

裁判を起こされたら、裁判所から「答弁書に貴方の主張を記載をして裁判所に送ってください」との通知が訴状と一緒に郵送されてきます。
その際に答弁書に債務が存在することを前提に自分のいいぶんを記載をすると「債務の承認」となってしまう可能性が高くなります。
債務の承認は、消滅時効が完成していても消滅時効の権利を放棄することと同様の結果となり、消滅時効の援用をすることはできなくなります。
(昭和41年4月20日最高裁判例)http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=57740


同様に裁判手続きで(債務が存在することを前提として)相手方と和解をすることも同様です。
裁判所に何ら書面を出さずに、「裁判手続き」についてサポートの依頼をされた方については
(私が書面を作成して)答弁書で「消滅時効の援用」の主張をして、債務の支払いの義務を免れました。

しかし、裁判手続きで既に債務の承認と判断される主張をされた方について、
「消滅時効の援用」を主張しても裁判官が時効消滅を認めることは大変困難になります。


そして、裁判所で和解をすると、和解が確定した時点から改めて消滅時効の期間が進行します。


 消滅時効の知識がなくて、相手方と訴訟上の和解をした場合でも、判決が確定した場合と同様で、確定した時点から10年の消滅時効期間が完成しないと消滅時効の主張をすることはできません(民法174条の2第1項)
例え、和解した時点で(若しくは判決が確定した時点)で消滅時効という制度があることを知らなかったとしても「あのときは消滅時効という制度があることを知らなかったから和解は無効だ」と主張しても、(法律上)認められないでしょう。 

法律の諺に「権利の上に眠る者は保護されない」というものがあります。
つまり、法律を知らなくて行為を行った者は「知らなかった」ことを理由に無効を主張できないケースが往々にしてあります。

せっかく認められている法律上の権利を行使しないで、知らないうちに放棄してしまうことのないよう、正しい知識を身につけましょう。
[2016/08/09 22:08 ] | 債務整理 | コメント(0) | トラックバック(0)
自己破産Q&A第2回
 Q2 一度も返済していない借金があるのですが、債務整理できますか?
      破産のときはどうなりますか?

   A2,
   任意整理の場合は債権者との交渉が難しくなる場合があります。
   破産手続きの場合、免責に異議を出される可能性があります。

   破産手続においては、債務の免責に関しては、重大な利害関係を有する
   債権者に対して(破産手続において自己の債権に関する範囲で)異議を
   申し出る権利が認められています。
   

   異議が出されたとしても、免責するかどうかは裁判官の判断になります
   から、判断に影響を与えることはあっても、必ずしも免責が許可されない
   というわけではありません。

   債権者の異議に対して、裁判官が「免責を認めるのか不適当」と判断す
   ればその借り入れについては免責が認められないこともあります。
   (借金が免除されないということです)

   実務上は、借入の原因とその後の返済状況について債務者側に悪質な
   意図がないかぎり、免責が認められないことはほぼありません。


   個人再生手続きの場合再生計画案に不同意を出される可能性が
   あります。
   法的整理の場合、でてくるケースとしては、当初から意図的な行為で
   借りた場合(はじめから返す意思はなく、法的整理により債務をゼロ
   にするつもりで借りた)詐欺的借入の場合には、詐欺罪に該当する
   可能性もでてきます。

   そしてその場合、「破産となる原因があることについて、そのような
   事実はないと騙して借入をした場合には「免責不許可事由」に該当
   し、免責(債務の支払い義務が免除されること)許可されない場合
   があります。

   また、破産申立により債務が免責されることを知り、破産するつも
   りで、詐術を用いてお金を借りた場合は、免責不許可事項に該当
   し、破産しても免責が認められない(免除されない 借金がゼロに
   ならない)
   ということになります。

   個別の事情で(金額や期間等)により判断も異なりますから、一度
   も返済していない場合、弁護士や司法書士によく相談すると良い
   でしょう。

[2016/07/17 17:41 ] | その他 | コメント(0) | トラックバック(0)
自己破産Q&A第1回 
みなさん こんにちは、
今回は「自己破産」についてQ&A形式でお知らせします。
自己破産手続とは、 自分の財産や収入超える借り入れがあり、
 継続的に支払をしていくことが不可能な状 態に至ったときに裁判所に申立て、法律上、 借金の支払義務を免除される手続です。
自己破産について、当事務所での実務経験の中で、「よく聞かれる質問」や「よく相談される事項」について、Q&A形式でわかりやすく解説します。

「自己破産」の第1回は「自己破産すると他人に知られますか」という
相談者から多く質問される事項について解説します。


Q1 自己破産をすると他人に知られますか?

   A1 
   自己破産手続きをすると、手続き完了時に「官報」(政府が発行する広報
   媒体、法令の新設や改正、行政処分や、裁判所等官公庁の決定事項等
   が載せられている)に掲載されます。

   (一般の人はほとんど官報を読む場合はないので、あまり広く知られると
   いうイメージではありません)

   そして「破産者名簿」に掲載されることになります。

   「破産者名簿」とはその人の本籍地の市区町村役場が管理している名
   簿で「身分証明書」に記載される破産者情報、第3者が閲覧することは
   できません。

   また免責(破産申立人の債務がゼロになることとする決定)が決定さ
   れると、抹消されます。
   復権(破産手続き上の資格制限が解除されることです免責許可の
   決定が確定されれば、復権となります)になっても同様です。

   免責が不許可になると破産者名簿に記載されますが、復権により
   抹消されます。

   「復権は具体的にどういう場合にされるのですか?」
   「復権には2種類あり、①免責許可が確定したとき②破産者が破産
   手続き開始以降、破産法265条の罪(破産詐欺罪)について有罪の
   確定判決をうけることなく10年を経過したとき(破産法255条1頁4号)

   「2種類の復権により破産者名簿への記載はどのように異なるので
   すか?」

      ① の場合、そもそも破産者名簿に記載されません。

   (但し、破産開始決定から1ヶ月経過しても免責許可申請等の
   手続きをしていない場合、いったん記載される可能性あり)

       ② の場合、破産者名簿に記載されるが、復権で抹消されます。



[2016/07/01 17:50 ] | その他 | コメント(0) | トラックバック(0)
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